Diary 2005. 4
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4月1日 (金)  極々小さな命

2017年の秋が過ぎた頃、小さな鳥でも飼おうかなとカインズホームのペット売り場へフラッと出掛けた時のこと。

オウムやインコだけじゃなくハムスターのいろんな種類もあるんだと思いながら陳列棚を見ていると、一際小さな白くて黒いウサギのように丸まっている動物と出会った。
それが人生で初めての「パンダマウス」を見た日だった。

白く真ん丸に座る体は、襟元と頭部の半分ほどが黒い毛に覆われ、お尻の辺りにも黒い斑が可愛い模様のように入ったネズミいや、マウスだった。

思わず店員さんに「このパンダマウスとは何年くらいの寿命なんですか?」と尋ねたら、「4,5年です」と応えられ、(割合長く生きるんだなぁ)と思った頃には視界に鳥は入らなくなっていた。


4月2日 (土)  自然に向かった

帰ってからというもの、あのパンダマウスが頭から離れず、インターネットで調べる日々が続いた。

パンダマウスは江戸時代から愛玩されてきた二十日鼠を改良した日本古来のもので、体長は僅かに5cm15gほど。あのミッキーマウスの元になったものとも記されいた。
ただ、どこでも手に入るわけでなく、平均寿命は1年半から長くて3年というかなり短い。それ故に今まで僕が目にすることがなかったのだろう。

二度目にカインズホームへ行ったときにはついに「触らせてもらってもいいですか?」と言ってしまい、その小さな体を両手でお水を掬うように手に取った。

ドクドクドクと小刻みに震える小さな体は、まるで怯えているかのようだったが、過去にも似たような体験を思い出した。
それは以前飼ったことのあるハムスター、小学校の頃はズボンのポケットや帽子の中に入れて連れて歩いた記憶だ。
だがパンダマウスはもっともっと小さく、噛みつくこともなく動かなかった。

今から思えばカインズホームで売られていた雄のパンダマウスは、小さなケージに長く入れられていたため、動くことを忘れていたのか、夜行性なのでおとなしかったのかも知れない。
パンダマウスはとにかくチョロチョロ動き廻る習性なのだから。

もう飼うっきゃない。完全に心は動いていた。


4月3日 (日)  調べる毎日

主にインターネット、スマホで検索してたのだが、ネットの普及された頃にはすでにブログやヤフーの知恵袋、mixiなどで割合多く紹介されていた。

エサ、病気、寿命、価格、行動パターンなどいろんな人や業者、ブリーダーが書き込んでくれていたが、案外マチマチなところもあって詳しくは分からなかったが、とにかく飼ってみようと入手先を探した。

これまた案外売ってるところが無い。
YouTubeで見ると長崎のバイオパークで、100匹以上のパンダマウスが飼育されてるのが出てくるが、わざわざ長崎まで求めに行く気もしなかったので聞くことはなかったが、取り敢えず近くの小動物を扱うお店にあちこち出掛けたが、「今は取り扱いが無い」ということで全滅だった。

ショック。飼う気になっているだけに行動が止まらず、やっと見つけて連絡がとれたのは、南河内ににある「ワールド牧場」というところだった。

家から車で1時間半、電話で「メスが一匹だけいます」と聞いたの「見に行きます!」と翌日くらいだったかなぁ…休園中だったが対応して頂けるということだった。

前日も当日も、ワクワクしながら車を走らせたのを思い出す。


4月4日 (月)  初の顔合わせ

2018年2月21日、人生初のパンダマウスを求めて大阪の河南町にあるワールド牧場へ行った。

冬場なので土日祝日以外は休園中だったが、牧場に居る動物たちに休みはなく飼育員さんたちも出勤されている。
聞いた通り事務所へ向かうと小動物担当の女性飼育員の方が出迎えてくれ、奥の管理部屋へ通された。

犬や猫、その他の動物たちがワンワンギャーギャーと騒ぐ隣の部屋に、お目当てのパンダマウスが一匹だけひっそりとケージの中に木屑に埋もれて眠っていた。

「ちょっと喧嘩したみたいで一人でいるんですよ」とその木屑から手に持ち上げて見せてくれた。
(想像してたよりかなり小さい)そう思ったのは、生後4週間程度立ったからなのかも知れない。
人で言えば小学生くらいだろうか。

パンダマウスは夜行性だが、さすがに手に持って連れて来られたせいか、眠そうな顔をしながらチョロチョロと動き始めた。

「あ、起こしちゃってゴメンね」と飼育員さんが優しく声をかけ、目の前にそっと置いてくれたのだ。
(やはり可愛い、可愛すぎる)そう思った。
首回りが黒い毛で覆われお尻の左側にだけ斑があり、まるで蒙古斑のようにも見えた。

即気に入って「いただきます」と、書類を書きながら初めの注意点などを聞いて持って行った小さなケージ(虫かご)に入れ、帰り道の水分補給のため、小さく切ったニンジンを貰い連れて帰った。


4月5日 (火)  命名

家に連れ帰り、用意してた中くらいのプラケージに移して様子を見ていた。

パンダマウスはネズミやハムスターよりも案外デリケートな生き物で、新しい場所へ来ると先ず隅から隅までチェックするらしく「これは何だ?どうなってる?」と、臭いを嗅いだり噛んでみたりしながら覚えていく。

迷路なんかも想像以上に早く覚える賢さが際立っている。
そのため、置いてある物や壁や通路かを認識しながら記憶していくので、毎回掃除する度に同じところへ戻してやらないとストレスになることもあるという。

土竜のように潜ったりするし上へ登ることも大好きだが、何せその小ささから、ちょっとした高さでもかなり高く感じているのか飛び降りたりせず、慣れるまでそろりそろりと伝いながら降りて行く。
(下を覗き込んだりするのは高さが分かるからなのだ)

寝床を決めたりお水やエサを探してうろうろ、いやチョロチョロと動き廻って探す。
その仕草も堪らなく可愛いのだ。

さて最初は名前を付けてやろう、女の子だからきっと美人に違いない、江戸時代から愛玩されているなどを考えて、日本で古くからの美人を示す呼び名で「小町(こまち)」と名付けた。

初めて呼んだ時は何か照れ臭くなって「小町さん、新しいおうちはどうですか?」とさん付け敬語で話しかけてしまった。言葉も通じないのにね。

(こまっちゃん、これからヨロシクね!)

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4月6日 (水)  哺乳類の中で一番小さい?

産まれたときはいろんな動物も殆どが同じような大きさなのに、このパンダマウスは大人になっても小さいので、いつが子供なのか大人なのかが全くわからない。

家に来たころ体重を量ってみたら、たったの10グラム。手で持っても重さは感じないが、小さな手と足でしっかりとしがみついているのが分かる。

夜行性だが、ちょっとぐらいなら明るいところでも遊んでいられる(この子には遊びじゃないかも知れないが)。

しかも全くと言っていいほど鳴かないので、カリカリ噛んでる音やカサコソ動く音でしかわからず、もちろん呼んでも返事はないけど「なぁに?」という感じでこっちを向いてくれる。

目は近眼で悪いが、鼻と耳はいいので、音や気配に反応して耳をこっちに向けるから見つめられているように思えてしまう。
眼球が動かないのでじーっとこっちを見ているような気がするのだ。

さあ今日もご飯のペレットとお水を飲んで、ガンガン遊んですくすく育っておくれ。

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4月7日 (木)  余命1年半から3年で生まれてくる

この小さな命は、たとえ健康であっても1年半から3年の寿命なので脈拍や呼吸がとにかく早く、人間の数倍のスピードでで生きているせいか、眠ったり起きたりを一日に何度となく繰り返す。

産まれて2、3ヶ月だから、中学生から高校生へといったところだろう。
日増しに少しずつ動き方が変わっていくのも興味深い。

何が好きなんだろう?どうすれば喜ぶんだろう?右利き左利き?運動は足りてる?満足してくれてる?ストレスは溜まってない?などなど。
お前は今なにを考えているの?という、決して結果の解らない問答が毎日頭の中を巡っている。

不思議なことだが、哺乳類の中では人間とこういったマウスだけが食べ物を分け合って生きるというデータがある。
それが事実なら希な出会いだったと思う。

これからちょっとずつ好みを探るためにも、いろんな物や野菜などを小さく小さく切って食べさせてあげようと思う。

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4月8日 (金)  想像以上の小さな世界

哺乳類最小とは言っても昆虫じゃないんだからと思ってたが、この子らにとっては人間の感覚を遥かに凌ぐものが多く見つかったことに感動させられる毎日。

例えば柔らかい極細歯ブラシで撫でてあげても、毛先がで竹の棒の束でつつかれているようになったり、タオルを敷いてもそのループ状の繊維一本一本が手足に引っ掛かるので、まるでトラップの連続の上で生活することになるようだ。

人間から見れば米粒より小さな「稗や粟や黍」も、小さな小さな手の指先で一粒一粒じっとうずくまって殻を剥いて食べている。
一見「何で動かないんだ」と思わせるほど、その中身と殻をちゃんと見分けながら食べているのが、まさに芸術的な手捌きと言える。

その器の中で食べながら、食べないものはその小さな手で「ひょい」と片手で退けるのを見ていて思わず吹き出してしまった。(たぶん右利きなんだ)とも感じた。

部屋で無農薬栽培したブロッコリースプラウトなんかも、一本差し出すと器用にパッと片手で掴んで両手に持ちかえて葉の部分だけをパクパクっと食べる。
食べた後も「もっと無いの?」といった様子でこちらを見るのが堪らなく可愛い。

中でも大好物はソバの実で、一個殻を割って食べるのだが食べ終わると「もう一個!」と言わんばかりの顔をする。
馴れた頃には起きてくると「ソバの実ちょうだい!」とまるで催促するかのようによじ登ってくる。

僕らが帰って来るのを待ち構えるかのように出てきたり、ソバの実を詰めた瓶の蓋を開ける音に気づいて、その小さな体を精一杯伸ばして立ち上がり反り返るまでになるようになっていた。

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4月9日 (土)  室温調整

パンダマウスのコマチは見ての通り毛がフサフサ。

一見は暑さに弱く寒さに強そうだが、案外これが難しく寒すぎると冬眠するかのように動かなくなってそのまま死んじゃうこともあるそうで、風通しの少ないプラケージなどで飼い下に専用の電熱ヒーターパネルを敷いてやってる。

それにこれから暖かく(暑く)なって来るので、今度はクーラーなどが当たるよう風通しのよいケージに変えてやらないといけない。

いつもツルツル滑るプラスチックの中で暮らさせてるの、今度はもっと大きめで木製の家を作ってやろうと考えホームセンターで材料を買い工作コーナーで作ったのだが、これがまた悪戦苦闘、木が細く割れやすいので一番小さなビスでやっても所々が割れてしまい、補修に補修を重ねてやっとお手製のケージが出来上がった。
時間はかかったけれど楽しかった。(喜んでくれるかな?と)

早速持ち帰りお引っ越し。
これまた所々手直しが必要だったが、殆どが木製なのでプラケージよりは良かったと思う。
コマチ当人も新しい家が出来て、あちらこちらをチェックしながら慣れていってくれた。

さあこれからどんな遊びをするのかな?

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4月10日 (日)  夏真っ盛り

コマチのお陰で夏場はエアコンを切ることがなくなり、一日中涼しく快適な部屋になった。

夏場でも夜行性は相変わらず、夕方から起きてきて活動を始める。
逆に言うと昼間はぐっすり眠っているので心配なく仕事に行ける。
(ただ休みの日は昼から相手してもらえないのが少々寂しいが)

どこかの草原にでも連れて行って思いっきり走り回って遊ばせてあげたいけれど、残念ながら野生ではないので、たぶん天敵にやられてしまうか走って行ってそのまま帰って来なくなるのがオチだ。

最近では基本のエサ(ペレット)以外のいろんなおやつに興味を示し、家で無農薬のブロッコリースプラウトを栽培してあげたり、ソバの実やたか黍などの固い殻を剥いて食べるのがこの子たちのお気に入り。

夜に人の気配を察知すると「ちょうだいちょうだいダンス」のような可愛い仕草をするので、あんまりおやつばかりはダメなのだがついついあげてしまう。

ポップコーンなんかも作ってあげたが、そのせいか少しお腹が緩くなったりしてしまう。

何にも言わずじっとこっちを見つめるだけなので、少しの変調も見逃せず結構管理したげるのが難しいなぁと思う。


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