ラジオ関西送信所移転瞬間見学記

ラジオファンなら興味がある送信所移転の瞬間

 JF3MXU  西 川 敏 弘 

(第1級陸上無線技術士/第1級アマチュア無線技士)

はじめに

 私は JOCRラジオ関西(AM神戸558−海の見える放送局−)の古くからフアンの一人であり、個人的には趣味の無線・放送マニアとしての活動をしています。

私のAMK応援のページもあります。ぜひご覧ください

 去る平成6年11月23日に、このラジオ関西の送信所が淡路島の北端である岩屋から、東浦町の大磯に移転したことは ご存知の方も多いと思います。

 移転の理由は 明石海峡大橋ができることにより 中波ラジオの同局(558kHz)の送信に支障をきたすということであり、いわゆる電波障害のための移転でした。普通電波障害というと送信側が加害者になりますが、近すぎる明石大橋によりAMKの電波発射に影響があるのです

旧送信所(移転当日撮影)バックに明石大橋が写っている

 私は同局のヘビーリスナーであり、移転当日は送信所より「公開生放送を行う」ということを同局の番組で知りました。

送信所移転というと朝一番の放送からだろうと思っていたのですが、何と午前9時の時報で切り替えるというのです。

 そこで、これはぜひ行かねばと思い、友人である泰中美彦氏(JE3BRS 神戸市灘区)のマイクロバスで、当日早朝より出かけていき、アマチュア無線家らしい「さまざまな実験・確認」をしたのです。

この写真は、友人JE3BRSのマイクロバス(乗員は私と2名のみ)

アンテナ(指向性のため2本)の真下(中間地点)で受信!

 本来なら、無線雑誌に載せたいところだったのですが、その約2か月後の1月17日、あの恐ろしい阪神淡路大震災が起こりました。

 ご存知のよう、私たちの住む神戸市は震災で壊滅的な被害を受けました。特に私は東灘区に住んでおり、勤務先は兵庫区の定時制工業高校で、ここは避難所や医療活動の基地になりました。

 そのため、日々の生活や働きながら学ぶ生徒たちへの対応などに追われる日が続き、この話題についても発表の機会を失ってしまいました。

 そして、日常生活に戻りつつあった平成8年11月、私のホームページ開設を機会として、これを公開したいと考えたのです。インターネットで公開したところ大きな反響があり、今回AMK関係話題を集結するにあたり要望の大きかった改訂を行い写真などを増強しました



ラジオ関西の送信所

 

 さてこの写真は 20年以上前のラジオ関西のベリーカード(当時はBCLブームでこのようなベリーカードを収集するのが流行していました)

 淡路島の北端 岩屋にあった 旧送信所の写真です

 移転した 約2ヶ月後 あの大震災がおこるとは・・新しいアンテナになっていて良かったのかも知れません(前のアンテナでは倒れていたかもしれません)

 というのも、旧来のAMKの送信所のポールは新型と比べ細いものであり、アンテナの根元は写真に示す通り電気的に絶縁した台(基礎)にポールを乗せ、下部から給電する方式です

旧ラジオ関西岩屋アンテナ給電部

それに対し、大磯に作られたAMKOBEの新しい鉄塔(タワー)は、135mもあるのですが完全自立型のタワーです。

 

AMK新送信所からの公開放送風景

これは当日の公開放送風景です。当日は 三上公也アナウンサーの番組「三上公也の朝は恋人」を公開生中継されていました(震災後 惜しくもこの番組は終了した)

三上公也さんは、99年4月より、「ハーイパラダイス旅行三上公也です」や、その後、ニュース番組CLICK TODAYなども担当されています

AMK新送信所から三上公也アナ

送信所は2階建ての建物であり 非常用スタジオなどもあります。当日は2階にあるスタジオでなく建物の外部階段の踊り場のような場所がありそこから公開放送をされていたのです。丁度真横にタワーが見えますね

AMK新送信タワー

タワーを下から見上げる。2つのパラボラはSTL中継用

新送信所の建物とタワー

タワーの根元にいくとこのように巨大さを感じる

 

当日 番組にも出していただき、内部も見学させていただきました

番組スタッフの方にも親切にしていただき 番組にも特別に出演させていただきました。記念品のテレホンカードもいただき本当にありがとうございました

 

タワーは自立型で 上部より給電する方式である(普通は 碍子で地面と絶縁し、ポールをステーにより固定するのが多い)

なおこの送信タワーは東経135度線の上にあり135mの高さが2本あり 両方に位相を変えて給電していると説明を受けました。同局の出力は20KWであるが指向性アンテナであるため指向性方向については強力な電波となる訳である。 同局の資料によれば空間放射電力は44KW相当になるということです。 さらに資料によれば、558KHzという低い周波数は中波放送では電波伝播上有利になり、仮に1000KHzの電波と558KHzの電波を同じ条件で発射すると到達距離100Kmの地点では558KHzの方が4倍も強い電波となるということです。 この根拠はCCIR−国際無線通信諮問委員会勧告388−2による伝播曲線(丘陵地帯)から求めたと明記されていました

東浦分校方面から見たアンテナ

洲本実業東浦分校方面からタワーを写す

 

放送終了後は、技術の方に説明をいただき送信所を見学させていただいきました。

AMK新送信所の看板

 

AMKの20KW送信機JOCR

これが、AMKの送信機!2階スタジオから見下ろす




  上の写真は 送信所移転の移転案内    

  同局アナウンサーの三上公也さんから後日いただいたもの(大変感謝しています)




 

 興味があったこと(実験・見学の目的)

(1)送信の切り替えの瞬間を見る(ラジオを送信所直下で受信して聞く)

(2)送信アンテナ直下での受信状況はどうか(信号強度・不要輻射等)

 受信機の初段がつぶれないか(何せ20KWですから)通常の受信が可能か

 直下で他局の放送が聞けるか(これは意地悪だと思ったが)

(3)中継回線がどのようになったか

 (マイクロウエーブSTLでは、海の上が伝送経路になっており海面反射の悪影響という問題もあり 以前はわざわざVHFの中継波FMを使わざるを得なかったはず)

AMK旧送信所の中継波受信アンテナとタワー

旧岩屋送信所にあった中継波用タワー。VHFのFMで中継していた!

(4)AMステレオ対応を考慮しているか

 

 結 果


(1)送信機の切り替え操作そのものは見えなかったが9時の時報後すぐ 旧送信所の電波が停波する。(同局の9時の時報は面白い・・宝くじか「くじ」の時報をお知らせします・・

  すなわち公開番組の8時台は ここから番組はしているが送信所は岩屋の旧送信所から電波が出ていいたということである。9時の時報が岩屋送信所の最後の仕事という訳か..キャリア(搬送波)が停止したこともわかる。

  雑音のなか アジア系外国語の放送が確認できる。

  その後 この新送信所より第1声(というより音楽と共に三上アナの声)が出る。

  受信機のALCの制御範囲内(通常受信機には信号強度の変化に伴う受信感度変動を防ぐためオートレベルコントロール回路が内蔵されている)で、通常どおり良好な受信状況が確認できる。

(2)信号強度 旧送信所とは6.4Kmしか離れていない。

  信号は強力であったが、切り替えによりさらに強力となることが感じ取れる。

  各種受信機で確認するが さすがプロ きれいな電波である。

  他局の中波放送が影響なく受信できたことは予想を越えた。

(3)STLは 新式のものすなわちマイクロ波。バックアップにISDN回線も

(4)ステレオ化には 対応できるよう中継装置や送信装置選定にはある程度考慮されている様子である。ただし当時の時点では演奏所(スタジオ)が当然モノラルであった(装置が新式のものはステレオ対応ということだが)

  震災で新局舎(須磨よりハーバーランド移転)となったので徐々に ステレオ化への環境は整備されていると感じている。

  ただし、同局は震災で評価を高めたとはいえ、ラジオ単独の民放局である。経営的には、なかなか判断が難しい環境なのだろう

最新情報では、同局の設備は(新設のスタジオサルパを見る限り)ステレオ対応を意識していると感じる。今後に期待したい。

このことは私だけでなく実際ニフテイのラジオハウスでも 同様のスタジオサルパを見た感想が発言されていたようである。興味のある方は NIFTY のFRADIO(GOコマンドでFRADIOへ)

実際スタジオサルパに見学行かれましたらモニタースピーカを良く聞いておいてください・・

しかし、FMに押されたとはいえ あの電話リクエストを始めたのがこのラジオ関西というのは有名な話であり、所有レコード数では国内トップクラスという。噂によれば他局が借りにくるとか(どこかの番組で言っていたようだが)

  私の少年時代ではFM大阪と番組内容を競っていたのが懐かしい。

 余 談

80年代前半までのJOCRは ちょうど今のfm802の番組作りに似ていたように思う..たぶん関係者もいるのだろう ヒロ寺平さんなどの出演者は 以前ラジオ関西の番組がメインだったし 逆にfm大阪が 少し前(70年代)のラジオ関西みたいに大人相手になった気がする。そのためか 今のラジオ関西は 洋楽ではジャズとかハワイアン・日本では 懐かしシリーズや青春フォークソングという特定分野(特に中高年層)に強い局になったようだ。 また青少年層ではアニメファンをがっちり掴んでいるようである。東京の文化放送等がアニメ主体の編成となってFM局にもその方向が見えるが、AMKはこの分野でもパイオニアであり先見性があると感心している。

私はいつも不思議に思うことがあります。FM局とAM局は 番組出演者のタレントなどはAM局の方が有名人を出しているように思えます。(その分 製作にお金もかかっているはずですが)FM局では 音質の良さと若者受けを狙ったおしゃれな喋りや外人DJが勝負でしょうが、昔のFMではエアチェック(死語?)に便利なように、かかる曲が雑誌に載ったりしていましたが、今やファックスやメールでのリクエストが中心です。 これでは以前のAM局の音楽番組と変わりありません。最近ではプロ野球の中継を始めたFM局もある(関東の話ですが)とか..

もし、ラジオ関西や「以前のラジオ関東(横浜)・・アメリカントップ40はCRでもやってましたね・・」がそのままFMの免許を受けておればもう少し様子が変わったのではと思います。これは極東放送のようなFM移行ではなく 北日本放送の中継局のような (AM 738KHz 5KW /FM 80.1MHz 0.05KW)両方の免許を受けることが出来たらということです

現に、都市部では ビルなども増え電波障害の要因があります。実際マンション内ではAM放送よりFM放送の方が受信状況も良く、そのためFMを聞くという人もいるほどです。AMステレオも良いのですが デジタル化やFM中継局の設置も考えて欲しいと思っています。特に、私は以前からJOCRの電波をFMの音質で聞きたいと思っていました。そのため、中継のFM波をわざわざ受信しようとしたぐらいですから..(ただし今はVHFよりマイクロ波に移行したので無理でしょうが..以前の須磨−岩屋間では、どうやら海面反射の影響で他局が移行する情勢でもVHFで中継していたという話を聞いた覚えがあります。今も大丈夫なのかな..良くバックアップと思われる「音質の違う放送」(電話のような音域)になるときが最近ありましたしね..)

 

別にこれは、異常な考えではないはずです。たとえは VHFのテレビ局であっても 山間部の難聴地域ではUHFのチャンネルが中継用として割り当てられているのです。ラジオ放送も 今やFMとAMの放送内容の違いが昔と違い基本的に変わらなくなっています。

今や影が薄くなったAMラジオですが 震災では大活躍をしました。

放送局の施設を見学していろいろなことを考えさせられました。

関連ページ

旧岩屋送信所つぼさんごさん提供

つぼさんごさんは写真のページを主宰されるAMKファン


大磯の鉄塔

「まさやん」さん作成のページ

私と同様ハムで、快くリンク承諾いただきました。


ラジオ神戸開局当時のパンフレット

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平成16年10月更新

 

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西川敏弘 jf3mxu@hi-ho.ne.jp

 



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