パソコンAF DSPによるCW信号処理ソフト
独Polar Electric社 MRP Ver3.7の概要
JF3MXU 西川 敏弘
(協力 JH3OII/AJ1A中村千代賢)
CWとコンピュータというと、「何を今さら」と思われる方も多いと思います。しかしモールス符号の解読や、AF DSP処理による約30HzCWフイルタが手持ちのパソコンのサウンドブラスタで実現できますから、コンピュータに頼らないCWフアンにとってもこのDSP処理は魅力ではないでしょうか。
外国製で今のところ和文は無理ですが、英文・ドイツ語CWも解読できます。もちろんCWの練習にも最適です。
今回は、このMRP Ver3.7を、使用する機会が得られたのでレポートします。ホームページの機能制限版といえどもDSP処理や録音解読などの機能は使用でき、十分評価や活用できるものです。
開発者が、製品版を欲しくなるはずだと自信をもって提供しているソフトであり、機器環境が許される方は実際に動作させながら試していただきたいと思います。なお、このシステムに必要なパソコンの条件は別表1に示す通りです。
基本的に付加装置は不要 ソフトのみで実現
DSP処理のハードウエアとしてサウンドブラスタ基板を活用するシステムで、CW解読のため無線機との接続は、汎用のオーデイオケーブルで接続します。改造などは一切不要です。さらに、簡単な回路(自作要)をRS−232Cコネクタに接続することにより、キーボード入力でCWを送信することが可能です。
CWの送信について、今まで通り手送りにしたい人は、このRS−232の配線をせず従来のキーを使用します。CWの受信解読も、コンピュータを補助的に使用するというのも使い方の一つです。解読した内容はテキストファイルに、本文や日時も記録できるというのが嬉しい機能です。このソフトは人間のもつ受信能力をさらに向上させるため、さまざまな工夫をすると共にコンピュータによる自動化もできるようになっています。
コンピュータの画面には疑似スペクトルアナライザーや、オシロスコープの画像もありオートチューン・オートスピード・オートノイズサプレッサーなど、自動化された操作性があり、プロのCWオペレータのバックアップ、や文書化利用の実績もあるということです。
機能制限(デモ)版はインターネットから入手
このソフトは、いわゆるDOS版ソフトですが、単なるDOSソフトとは違いWIN95での使用を前提にした作りになっています。またCPUも486−66MHz以上を推奨とあり、純然たるDOSの時代のハードでは動作不可のようです。当初486−33Mのマシンで試しましたが、エラー停止となり断念しました。このようにCPUパワーやハードウエア条件もある程度必要なもので、あえて軽快なDOSソフトにしたものと思われます。私はウインドウズ95のDOS環境で使用しました。なお、ウインドウズNTでは動作しません。
製品版はフロッピーデイスクで提供されるものもありますが、機能制限を解除するキーコードを組み込むことにより、製品版に変化するようにもなっています。製品版をホームページで通信販売しているのも時代を感じます。
したがって今回は、ダウンロードから、製品版化まで順を追って紹介していきます。なお、録音・再生機能は製品版化後も、そのまま活用します。
ホームページ
このソフトを開発・販売しているのはドイツのPolar Electric社でURLは、http://members.tripod.com/~PEeng/morse/です。
ここでは、MRPに関する詳しい資料、QST誌での紹介記事、モールス符号の記事も載っていますから興味ある方はぜひご覧ください。
ダウンロードするファイルの名称はunpac37I.exeです。これは自己解凍形式のファイルで、必要なファイルをすべて含み、他のツールは必要ありません。
なおこのプログラムはプログラム実行時にはUSモードで実行する必要があります。これが特に重要なポイントです。USモードというのは、単に英文エラーメッセージが出るだけの違いではありません。ウインドウズ95なら、スタートメニューよりMSDOSプロンプトを実行し、US<リターン>でUSモードになり、JP<リターン>で日本語モードになります。(このバッチコマンドでCHCP内部コマンドが実行されます) 日本語では¥表示となっていた部分がバックスラッシュになったことを確認ください。
詳細な使用説明がCQ誌1998年5月号にあります。ぜひお読みください
なお、最近は自動ダウンロードでなくメールで問い合わすように変更になったみたいです
実際に使用して
このソフトは電信専用AF DSPフィルターとしては申し分ありません。
機能制限版も、限りなく製品に近いのですが、これを使用するたびに製品版が欲しいと思いました。キーコードが送られてくるのが待ち遠しく思ったほどです。
CW解読には自動とはいえ、ある程度のCWの知識は必要でしょう。熟練者ならQRMがあっても耳のほうが優位性ありと思いますが、補助的には非常に便利です。また自動記録されますので途中で聞き逃した部分を復習するのに重宝します。
解読したファイルの一例を(紙面)に示します。このようなファイルが自動的にできあがりますから、必要に応じて整理する必要があります。
コンディションがいいのにQRMが非常に多いときのCWラグチューには最適でしょう。 面白いのは、ドイツ語CW(・−・− が Aウムラウト等)は出るようです。
最後に
ソフト的には、これだけ大量の処理をさせているので、現状ではDOS版にならざるを得ないという感じがします。そのため、DOSの弱点である国際化対応が難しくなります。我々は和文解読を求めたくなりますがUSモードなので少しの改良での対応は不可能です。日本語環境での開発も、特殊なものだけに採算上難しいのでしょう。
さらに送信機能を実現するには前述のようなドライバ設定をしなければならないのがマイナス要素です。しかしそれでも、この受信機能・解読機能を使用する価値は高いと思われます。同社は、今後も同様なシステムでパクターやRTTYなどFSK系も開発進行中であるというから今後も期待したいと思います。
話題のDSP技術は、受信機単独での時代から、パソコンと組み合わせてさらにその広がりとコストパフォーマンスを高めているようです。しかしいつも技術は過渡期という感じが否めません。それは古き技術を違う角度から攻めているからかも知れません。CW解読もDSPにより、古くて新しい技術になったように思います。
なお、今回の記事作成にあたりPolar Electric社のご協力をいただきました。記してお礼申し上げます。
記事共同執筆者JH3OII中村千代賢氏のホームページ ぜひご覧を
平成11年7月更新
西川敏弘 jf3mxu@hi-ho.ne.jp