コンピュータ時代の新しい無線機

505DSPの全貌

JF3MXU 西川 敏弘

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505DSP

これはもうアマチュア無線機というよりパソコンの周辺機器というほうが良いのではないだろうか。ダイヤルはおろか、ボリュームまで無い本体は、まるでミニタワー型パソコンの様な風貌である。そして驚くことに、マイクや電源スイッチを持つ「コントロールヘッド」はタワー型パソコンのベイに、フロッピードライブと同じ感覚で取り付けることができるというのである。また、タワー型モデルでなくとも制御がRS-232というからそれ以外のDOS/Vモデルなら接続可能である 今回は、この衝撃のデビューを果たした"505DSP"に関する情報をインターネットで情報収集することを試みた。 特にインターネットからウインドウズ版のデモソフトがダウンロードでき、無線機は接続せずコンピュータ制御の詳細が理解できるので機器環境が許せる方は、実際に動作させながら確認いただきたいと思います。 なお、当記事作成にあたり、製品試用の機会をいただくことになり、気になるコンピュータセッテイング(ハード・ソフト)や、コンピュータノイズをはじめとした受信状況なども報告します。ただし、製品はUS仕様のもので、実際に日本国内で販売されるもの(第3地域仕様)とは若干の差があるということをお含みおきください。(なお、日本の代理店は(株)トヨムラです。) 


ここでは 概要のみ紹介する。詳細はCQ誌1998年4月号でカラー5ページにわたり解説しているのでご覧ください

DSPについて

 DSPについては、多くのメーカが取り入れており、ご存知の方も多いと思います。

この原理を簡単にいうと、DSPはアナログ信号をデジタルコンピュータにより解析し変化させていくものといえます。 基本的なDSPシステムには3つの動作要素があり:アナログ信号をデジタルに換え、解析・変化させ、それをアナログ信号に再変換する、ということです。

デジタルのコンピュータは数字で作業をします。 アナログ電圧が高いとき大きな数字を割り当てます。アナログ電圧が低いとき小さな数字を割り当てます。 そしてアナログ信号がアナログ-デジタル(A/D)変換器を通ったとき、数字の列が時間と共に変化する電圧の代わりに出力されます。 入力電圧の変化が激しいため、一秒間に何千もの測定値を出さなければデジタルでの描写になりません。これを入力サンプルと呼びます。 サンプル間の時間は一定です。 このサンプルに何らの修正も加えずにデジタル・アナログ変換器(D/A)でアナログに再変換すると最初の信号の段階的描写となります。

 一秒あたりのサンプル数のことをサンプリングレートと呼びます。 サンプリング定理によるとサンプリングの周波数をアナログ信号の周波数の2倍以上にすることによりその信号の情報が失われることなく周波数の変換が可能です。

 この変換という現象を信号の混合(ミックス・ダウン)に使います。 505DSPの場合I.F.の中心周波数は40kHzです。 受信機のI.F. フィルタはピークで15kHzの幅があるため32.5kHz〜47.5 kHzの信号がA/Dコンバータに送られます。 さてサンプリング周波数を31.25kHzで決めると中心周波数は8.75kHz =(40−31.25) となります。 一連の信号は31.25kHzのレートで解析、処理され、それは40kHzより低い周波数です。

しかしSSB信号は僅か3kHzの帯域幅で済むため、信号は何回かバンドパスフィルターを通し帯域幅の2倍までサンプリング・レートを落すことができます。 結果として、デジタルフィルターはクリスタルフィルターやメカフィルの定番であったリンギングを起こさずして今までに聞いたことがない位まで狭帯域にすることが可能となり、DSP505の場合100Hzまで狭帯域にすることができるということです。

プロダクト検波器や平衡変調器は(I.F.とBFO信号を混合して音声信号を作る;マイクとBFOを混合してI.F.信号を作る)ミキサーです。 一連のミキサーの後には更なるミキサーがあります。 DSPでは位相をずらして合成するPSN方式でSSBを発生させています。 ダブルサイドバンドの片方のサイドバンドが位相によりキャンセルされもう片方が強調される、ひと昔前のSSB機でよくあった方法ですが、DSPでは位相シフトが周波数と一定であります。 機械的なキャリヤ・バランシングに関与しなくて済みます。 逆の処理が受信では行われます。

DSPの欠点は、数字を消化しなくてはならず、それには時間がかかります ―― 大きな信号が減衰制御されるまでに通り抜けてしまう程の時間です。

この問題を克服するために505DSPではアナログとデジタルのAGCを併用しています。

デジタル系統が信号を引き継ぐまでアナログ信号で制御します、 が、アナログのAGCは信号サンプルをデジタルフィルターの前で取るためにフィルターのパスバンド外の信号もAGCをかけてしまい、目的信号のゲインまで下げてしまいます。

そこで数学者であるDSPチップがゲインロスを計算しデジタルAGCシステムで電圧をかけゲインを取り戻すようになっています。 同様の原理がS−メーターにも応用されておりS−メーターが隣接信号で振れてしまうのを防いでいます。

デジタルAGCの応答はアナログAGCでスローの場合のそれと同じように設定されており、スピードはデジタルAGC側でセットしますのでアナログAGCは常にスローにセットされています。

2つのシンセサイザーは低位相雑音の局発信号を75MHz及び40kHzに両方向に変換するミキサーに供給します。 第一局発は最新技術のDDS/PLLハイブリッドで最小ステップは0.5Hz以下のものです。 しかしコントロールソフトの都合上ユーザーが使えるのは1Hzステップになります。 第二局発はVCXOです。 これは固定した周波数を第二ミキサーに送り込みます。 両方の局発とも共有の高精度基準発振器にフェーズロックしています。以上がカチナ社のDSP505技術解説の要点です。

 ブロック図から考えられる疑問点として、第一IFの75MHzから第二の40kHzに落とす事は本当に技術的に有利かということが理解できないままになっています。

特に、受信に関するC/N比/キャリヤのノイズやハーフイメージの問題など各種ノイズについてどのように解決しているのだろうというコメントも仲間たちからもいただきました。

私はどちらかというと、この機種はバリバリのDXをする旧来の無線マニアより、この機種の制御機能に魅力を感じる方が購入するものと思っています。


記事共同執筆者JH3OII中村千代賢氏のホームページ ぜひご覧を


平成11年1月更新

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