8月25日 (土)  人の振り見て我が振り直せ


ある夏休みの日だった。

須磨の海水浴場へ出掛け、パラソルを広げてボンボンベットの上に僕は寝ころんでいた。

当時は日焼けサロンもあちらこちらで開業されるほどの日焼けブームで、ファラフォーセットメジャーズ主演のハリウッド映画「サンバーン」などのポスターが街角に貼られてたのを思い出す。

「サンバーンは日焼けっていう意味だって知ってた?」と同級生に教えられたのも覚えている。

綺麗にムラ無く日焼けをするには、何といっても日焼けオイルが大事だ。

それも「コパトーンの一番黒く焼けるやつ」が飛ぶように売れていた。

ビーチサンダルは稲妻マークの「ボルト」か、ビルケンシュトックの革サンダルが流行っていた。

女性の水着はビキニからハイレグのワンピースに、男性はトランクスタイプとビキニが半々くらいの時代だったと思う。

その日はいつもの灰皿を忘れたので、吸った煙草を手で盛り上げた砂山へ刺して消していた。

もちろん吸い殻は後で持って帰るのだが、今では絶対にしない事になったのも、その日からだ。

僕らの隣へ、幼児連れの家族が来てレジャーシートを広げている最中、母親にだっこされて来た子供が砂浜へ降ろされ、「アチっ、アチっ」と足をバタつかせて言っていた。

この熱射の中、直射日光の砂浜へ裸足で立てば、そりゃ大人でも熱いだろうが、次に「ギャー」とその子供が大声で泣き出したのだ。

母親は必死になってその子の足の裏を濡れたタオルで冷やしている。

どうやら足の裏を火傷したらしい。

その親子が来る直前に、バスタオルを広げて肌を焼いていた女の子たちも、同じように吸った煙草の吸い殻を砂浜に刺して消していたが、砂に紛れて持ち帰るのを忘れたか、そのまま放って帰ったのが原因だったのだろう。