12月1日 (水)  進む時計と遅れる時計


今でこそ「電波時計」なるものまであり、現代人は正確な時間に敏感になったが、その昔は「だいたいの」で済ませて来れたものだ。

歳をとると若い頃より時が経つのが早く感じるのは全くの気のせいだが、歳を増す度に自分の「夢」までの時間がぐっと短くなるのは当然のことだろう。

師走は辞書を引くと「しわす」或いは「しはす」と書いてあり、師と言われる坊さんも馳(走)るということから、忙しいんだと記しているが、12月にだけ、お坊さんが走り回っているのをあまり見たことがない。
(寺の大掃除でもするからだろう)

だが確かに12月に入ると急に忙(せわ)しくなるのは僕が市場育ちだからだろうか?

特に神戸ではルミナリエなるものが震災から現れ、生鮮食料を扱う我々にとって仕入れ値が跳ね上がるなど、年末と同様に「一機集中」した買い物客が多くなるので、仕入れるタイミングに気が抜けない毎日が続くのがこの時期だ。

「お正月くらいは、良い物を食べて過ごそう」と、年に一度だけ気張って牛肉を買いに来てくださるお客さんも確かに増えて、こちらもそれに応えようと、いつもに増して良い品揃えを心がけてもう30年が過ぎた。

お手伝いの頃から数えると40年になるし、産まれて此の方、大晦日に市場に居なかった日が一度も無い。

会社員や公務員の友人は、12月29日頃になると「御用納め」で休みに入る者が殆どで、毎年市場に年末ムードを味わいに来る者もいる。

年々、暮れやお正月らしさが減っているとはいえ、この時期だけは走り廻ることが当たり前になるよう身に染み込んでいるのだろう。

とにかく12月は、目の前のことと先のことを同時に考えなければいけない時で、頭と身体をフル回転させて「わんさか」働かなければ一年を終えることが出来ない。

師走は「商人(あきんど)」にとって、一日は長く一月(ひとつき)があっと言う間に過ぎて行く月なのだ。