4月18日 (土)  今日は何の日

本日は語呂合わせで「よいは」の日らしい。

「よいは」は「良い歯」でもなく「良い葉」や良い波」でもない。
政治の派閥に「良い派」があればいいけど、もちろん存在すらないと思う。

それで「よいは」とは、良い「刃」のことらしく、「包丁などの刃物をお手入れしましょう」とも書いてあった。
(そしたら11月8日や1月18日は「いい刃」の日になるのでは?と揶揄してしまいそう)

僕が社会人になっての初仕事は包丁を研ぐことからだった。
若い頃、切れる包丁に仕上げるまで研ぐのは、職人にとって当たり前の業と思っていたのだが、いろんな肉屋の職人と出会う度に、それは変わっていった。

ある職人は「包丁なんて研ぎに出せばいい」と自分で研げなかったり、切れにくそうな包丁を、まるで鋸(のこぎり)のように「ゴリゴリ」と動かせて肉を切る職人も居た。

ステーキなど切り身を造るのに、そう何度も包丁を入れるのは、食材に付加がかかって良くないことだし、切った断面が野菜の飾り包丁のように、ギザギザになってしまう。
(たまにスーパーのバックヤードを覗くと、そんな従業員を見かけるが、最初の頃に癖がついてしまったのか、お手本が無かったのだろう)

「預かり包丁」という訳ではないが短期の助っ人でよその店に入ることもあり、うちの店でも過去百人以上の職人と出会ってきた。
職人の世界では、まな板へ向かう立ち方、包丁の握り方、添え手の使い方などでもその腕前や癖がわかるが、最初の出会いで使っている包丁を見れば、だいたいの事はわかるものだ。

我々は主に切れ味の点で鉄製の鋼(はがね)を使用するが、包丁をピカピカにし過ぎる者、研げてない者、機械研ぎの者などと、その形は様々でいろんな包丁を見てきたが、大切なことは次の点だけだ。
1、清潔なこと。2、よく切れること。3、まな板に無理のかからぬ刃の型をしていること。
それらが出来ていれば材質は何でもいいと思う。

包丁も用途によって型も研ぎ方も違うのだが、肉屋の作業は魚屋と違い、「ドン」と音を立ててぶった切ることが殆ど無いので、出刃包丁のような物はあまり無いし、刺身包丁(柳)のようにしょっちゅう研ぐことも無い。
毎日砥石で研いでる肉屋が居るとすれば、よほど下手なのか、もの凄い仕事量で包丁を使うかだ。

年に1、2度ぐらいは粗砥石で型をつけ直すことはあるが、普段は一番目の細かい「仕上げ砥」か「棒砥(ぼうとう)」という細長い磁石の付いた鉄製のシャープナーを使い、シュッ、シュッと刃をあてて脂分を取り、刃先を合わせるくらいで後は洗って拭くだけだ。
それが故に僕が包丁の型をつけるときは、出来るだけ「薄く」するのが自分の特徴で、薄いと筋と肉の間に包丁の切っ先が入り筋引きがしやすく、刃が長持ちするからだ。
だから人に貸して、まな板を強く擦られた日には、切れ味が落ちたり刃先が欠けたりするので、他人に使わさなくなってしまった。

職人同士は当たり前に人の物など使わないが、出先の女将さんやパートのお姉さんに「ちょっと貸してね」と言われ「わぁーよう切れるわぁ!」と、返って来たときには(もうー)という事は、悲しいかな時たまあった。

その他、包丁自慢をするのにもいろいろあって、研いで研いでチビってしまい小さく使いにくくなった包丁を「これはもう18年も使ってるから」と得意満面に見せる人も多いが、ちゃんと使いこなせば20年でも30年でも使えるのが肉屋の包丁なのだ。

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