2月29日 (金)  神戸紀行B

ここ十年、他府県の人に神戸を尋ねると、震災の都市というイメージが多く返ってくる。
確かにあの大地震の傷は今も癒えることなく残っているのだが、神戸市内の面積だけで考えると実際には半分は大きな被災を受けていないのが事実である。

他にも、「神戸空港」「明石海峡大橋」「ヤクザ」「港街」「お洒落れ」「神戸牛」「夜景」などが、よく聞かれる。

古くから京都、大阪、神戸の三都市を顕す言葉に江戸の八百八町を文字って八百八寺(京都)、八百八橋(大阪)、八百八坂(神戸)などというのがあり、「京の着だおれ」「浪速の食いだおれ」「神戸の履きだおれ」と、靴の街のイメージもあるようだ。
今回はその三都を市場で結んだ錦、黒門と並ぶ神戸新鮮市場を紹介したい。

今、少子高齢化の日本で、神戸の兵庫区ほど老人の密度が高い街は無いと思う。
住宅も65歳以上の方が4分の3を占めるほど多く、神戸新鮮市場に来ている老人の割合は過半数を超えるだろうと思われる。
「神戸の台所」というキャッチフレーズもあるが、完全なる老人福祉市場だという人もいる。

実際に神戸で生まれ育った人や近隣に住む人たちが初めて訪れたとき、「こんな市場見たこと無かった!」「めちゃ楽しい!」と口々にして帰って行く。
その証拠に今でも日々、一万人ほどの利用客がある(ピーク時の年末は一日10万人を超えていた)のだ。

総店舗数は500店舗を超え、西日本一の集客力は今でも衰えていない。
品の良いオッチャンやオバチャンもやたらと多く、今の僕から見てお母さん世代の人が生き生きとしている市場街なのだ。

高齢者だけではないが、女性を虜にする魅力がこの神戸新鮮市場にはあり、行く行くは高齢者が居着く街、「高齢者天国」に成り得るだろう。

お爺ちゃんが亡くなって子供も離れていった孤独なお婆ちゃんたちが、孤独を忘れて楽しく生きて行けるコミュニケーションがこの市場の真の特徴になっている。